妄想小説家panのブログ。

素人の小説です。

2021-01-01から1ヶ月間の記事一覧

W【TOMOYA×ATSUSHI④】

高校生の時…とは言っても1年も行ってなかったけど、ちょっと仲良くなったやつがいた。たまたま、隣の席にいたやつが真面目そうで人あたりが良さそうだったから声をかけただけだ。 そいつ…タクは、扱いやすそうだなと思ったのに、意外と厄介なやつで、他の単…

W【TOMOYA×ATSUSHI③】

「ごめんね、店長」 ネカフェ店長の苦情で商品の交換に店に寄った。もちろんちゃんと、ツインテール美少女なぎさちゃんを持って。 すると店長が「お前…これ大丈夫か?」とコソッと小さい声で言って、読んでいた新聞を見せた。 隣の市で高校生がもう長いこと行方…

W【番外編TOMOYA×ATSUSHI②】

「もう無理…」先に俺がバテた。 当たり前か、あっちは10代だ。 「お前、何部?」 「陸上部」 「はあ???ひとりで逃げろよ、じゃあ… 」 振り返って耳を済ませても、もう誰も追ってくる気配がないので足を止めて、地面に座り込んだ。 本当はあのまま、捕まっていた方…

W【番外編TOMOYA×ATSUSHI①】

また夢だってわかってる。 痛い。 怖い。 やめて。 いくら叫んでも声が出なくて苦しい。 自分が呻く声が地獄から這い上がろうとする亡者のようだ。 もう何も痛くないはずの古い傷が疼いて、爪で引っ掻いて、新しい傷が蚯蚓脹れになる。 あと、どれだけこんな…

W【番外編ATSUSHI⑤】

もう、死んだんだ。 遠くから、誰かが通報したのかサイレンの音が何重にも重なって聞こえる。 タクは、いつも友也がそうしたように無言で顎をあげる。 友也の眠ったような顔を僕は目に焼き付けて、集まり始めた野次馬に逆らうように走った。 走って走って、…

W【番外編ATSUSHI④】

「なんだ…見たことあると思ったら俺の弟じゃないか、友樹」 弟。 友樹と呼ばれたこいつは、人あたりの良さそうな無邪気な笑顔をしながら、仁王像のように平気で人を踏みつけてナイフを向ける。 そして 「お前が逃げたせいで地獄だった」友也にナイフとともに突き…

W【番外編ATSUSHI③】

一緒の部屋に住むのはリスクがあると友也が言い出して、僕は無情にも身ひとつで追い出された。とはいえ、裏通りのネットカフェの店長に友也の顔が効くらしく、個室をひとついつも空けていてくれた。個室とはいえ、安くて古い小さな店だから、申し訳程度にド…

W【番外編ATSUSHI②】

あれからまた眠って、起きたのはちょうど昼になった頃だ。ふとベッドを見ると、今度はきちんと眠れたようで友也はまだ寝息をたてている。 それを見て少し安心したので、昨日コンビニで買ってもらった甘いパンを食べる。 「あまっ…」 友也が起きて、僕にこれか…

W【番外編ATSUSHI①】

昨日の夜は、迫る定期テストの勉強が全く進まず、自分で決めた課題を済ますことが出来たのはもう明け方だった。 おかげで、学校までの坂道を必死で自転車をこぐ羽目になってしまった。 高3になって、みんなが受験モードになっていく中で、僕は、長く休んで…

W【13】

理沙は無事だった。 17歳の 理沙本人は顔も知らない、ひとりの家出少年が守りきった。 何が起こったのか、これから理沙に全て話していかないといけない。 友也と初めて出会った時のことから全部。 そして、その形は歪み切っていたけど、晴人が理沙を愛してた…

W【12】

「遊ぼうよ、お兄ちゃん…」 確かに晴人は、友也に向かって笑顔でそう言って、僕から足を下ろした。 友也は、頭の中で何かがつながったようなスッキリとしたような顔をして同じように笑って見せる。 「なんだ…そうか…名前変えられたら流石にわかんないよ…友樹」 「…

W【11】

友也が言うには、晴人のことも全くの偶然だと言う。 晴人のことは他の客から紹介されたらしい。 今のように直接のやり取りはしていないため、晴人は友也を知らない。だけど、友也は晴人の顔を知っていたので、理沙の店に来た時に驚いたそうだ。 「これは…あく…

W【10】

翌朝、目を覚ますと理沙がまだ腕の中で眠っていたから、そーっと慎重に腕を抜いてベッドを抜け出した。 僕が仕事に行く前に起こせばいいだろうと、ひとりで理沙の分も朝食の準備をして、コーヒーをいれる。 正直なところ、食欲は全くなくてとりあえずトース…

W【9】

それから何日も、友也は現れなかった。 本当に人を小馬鹿にする奴だ。 いきなり現れて、人の生活を脅かすくせに見つけようとすると見つからない。 子供が出来るという報告を兼ねて実家に寄った時に、母に友也の住んでいた公営団地はもう住む人もいなくなり取…

W【8】

「どうしたの?タク」 「なんでもない、寒いだけ」 ソファーに座って、隣で眠りそうになっている理沙を引き寄せて頭に鼻先をつけると、シャンプーのいい匂いがした。 「じゃれつかないで」 「ごめんごめん」 「あの…さっき、晴人の話したでしょ?」 「うん」 「本当はその…

W【7】

倒れている川上を介抱して、落ち着きを取り戻させて話を聞いた。 「お前がやってんの?いつもいつも」 川上は腹を押さえながら、涙目で首を横に振る。 「お前だけじゃないのか…なんでこんなことすんの?友也に言われてやってんの?」 「違う…」 「じゃ、なんでだよ」…

W【5】

今、僕の目の前にいる友也は首元の広いTシャツに薄手のブルゾンを肩を抜いてだらしなく着ていて、身体中の傷を隠そうとしない。 山岸の家が燃えたことは、その次の日の朝には学校中の話題になった。山岸を嫌う生徒は多かったし、昨日の友也への仕打ちを見て…

W【4】

友也は2日ほど欠席して、学校に来た頃にはもう吉見達はクラスで完全に孤立した。 友也は変わらずで、なぜ休んでいたのか聞くと「制服をクリーニングに出してたから」とあっけらかんと言った。 「だって、めちゃくちゃ臭かったんだよ!教室のゴミ箱に弁当の残り…

W【3】

吉見はバイクのひき逃げ事故によって数日は学校を休んでいた。その間、吉見のグループがおとなしかったわけじゃない。 体育の授業を終えて更衣室に戻ると、友也の制服が無くなっていた。友也はため息をついてジャージのまま教室に戻り、教室の後ろのポリバケ…

W【2】

理沙と一緒に住み始めたマンションの1階にあるコンビニでパンを買って、部屋に帰ったのはもう日付がかわってかなり経ってからだ。 テレビをつけても深夜アニメか通信販売くらいなので、すぐに消した。 「明日は休みでしょ?私は仕事に行くけど」 「うん、ゆっく…

W【6】

※順番間違えのため先に【1~5】へ。 理沙の店はその日、客の入れ替わりが多く忙しそうだったけどラストオーダーが済むとずいぶん静かになった。 手が空くと理沙が僕たちのところに来て、3人で話し始めた。 理沙は一瞬、友也の胸のあたりを見て眉をピクっと動…

W【1】

もう秋だというのに、夏の暑さがまた帰ってきたような日だった。 理沙の経営するカフェの店内は久しぶりにクーラーを効かせていたけど、ドアが開く度にムッとした空気が入ってくる。 「外、暑そうね」 「暑かったよ、汗だくになった」 仕事の昼休み、時間に余裕…

プライド番外編【福田カズキの話②】

それはお前の本心なのか? 殴られて、意識朦朧としてるくせに、何言ってるんだ。 好きな女のために殴られに行って、死にかけてる時に友達から罵詈雑言浴びせられて それでなんでまだそんなことが言えるんだ。 振り絞るようにそう言ったリクは、ふと途切れて…

プライド番外編【福田カズキの話①】

朝、ふと目を覚ますと リクが部屋から出ていくのが見えた。 まだ、はっきり頭が起きていなかったけど、あのシルエットはリクで間違いない。 どこへ行くんだ? まだ体を起こすのは億劫で、まだ眠れそうだったのでウトウトするのを繰り返していると、カンカン…

プライド番外編【樋口美香の話③】

帰りは、セイのお父さんが駅まで送ってくれた。 少し恥ずかしかったけど、セイと2人で駅まで行くとしたらきっと私は話してしまう。 もう、会えなくなると言ってしまう。 助けてと言って困らせてしまう。 私もセイも車の中ではずっと無言で、駅に着くとセイは…

プライド番外編【樋口美香の話②】

高校入学早々、カズキは騒ぎを起こす。 厳密に言うとカズキが悪いんじゃない。混んでいた駅で同じ高校の上級生と肩がぶつかってしまっただけだ。 それに私は一緒にいたから聞いていたけど、ちゃんとカズキは「すみません」と言った。 校舎の違う私の耳にも、1…

プライド番外編【樋口美香の話①】

私を見上げたその顔が、とても綺麗で儚げで、私はまるで宝物を見つけたみたいに見惚れてた。 「何やってるんだろ?あいつら」私の前を歩いていたカズキが急に立ち止まる。 中学3年の遠足で、私たちは海の近くの遊園地に来ていた。みんな子供の頃から飽きるほど…

プライド番外編【佐々木セイヤの話最終話】

数日後、僕はもう留学先への出発が来週に迫っていて準備に忙しいというのに半ば無理やりリクに呼び出された。 行かなければいけないところもあったし、必要なものも買わなければいけないし、僕は約束の時間を20分ほど過ぎてリクの家に到着した。 親がいない…

プライド番外編【佐々木セイヤの話⑥】

どうやって家まで帰ったかは覚えていない。 自分の部屋に帰って、荷物を床に投げて、ベッドに転がると頬がピリっとした。 帰り際、二度と顔を見せるなと言われても僕が出ていかなかったから、カズキは空き缶と一緒に転がっていたガラスのコップを投げた。 僕…

プライド番外編【佐々木セイヤの話⑤】

僕は、女の子に優しくするのはやめた。 僕が女の子を好きになれない限り、優しくして好きになられても困るし、相手を傷つけたら僕も傷つくのだと知った。 それでも、心のどこかで自分が女の子を好きになれないことを認めきれなかったし、カズキにこの想いを…